●資料
 ◆5巻目次
 ◆人物紹介
 ◆工房図

●本文抜粋
 ◆第9話より
 ◆第11話より
 ◆間奏11より

『小さな世界の物語 5巻』について、もうちょっとご紹介しましょう。ここではほんの少しだけ、部分的な立ち読みができます。左のメニューで見たいところを選んでください。
第九話「無くした望み」より抜粋

「そこだよ」
 ふと、ヘルモークが穴を指し示した。
 セリフィアが近づくと、どこから出てきたのか、ローブをまとった男が現れた。これがヘルモークの言っていたゴーストだろう。なるほど、邪悪には見えない。
 ラクリマは、彼の胸に致命傷があるのに気づいた。刀傷のようだった。
 亡霊は、ゆったりと口を開いた。
「ようこそ我が工房へ。私はここの主、ダーネル=リッシュオット」
 アルトはその名前を一所懸命思い出した。確か、サーランド時代中期の大魔術師だ。恵みの森で怪物の研究と育成をしていた……そこまで思い出せたので、そっと周りに伝えた。
「招かざる来客以来、幾年月経ったことか……」
 ダーネルと名乗った亡霊は、そう言って視線を宙に彷徨わせた。
「我が工房は変わり果ててしまったが……そなたらに頼みたいことがある。我はどうも死んでしまったようだ。こうしてゴーストとなっているのだからな。だが、何が未練かわからない」
(何が未練かわからない!?)
 自分のことなのに、と、カインは思った。
「我が未練を明らかにし、我が魂をこの地の縛めより解放せよ」
 どうやら遺体を埋葬してやる程度では、話がつかないらしい。迷宮を探査しながら、この男の「未練」探しをしなければならない。こいつは結構、厄介かもしれないと、全員がぼんやり思ったようだった。
<続く>

第十話「工房の日常」の抜粋は、仕様により省略させていただきます。文庫でお楽しみください。

第十一話「偽りの真実・真実の過去」より抜粋

 これより前、ヴァイオラたち3人は、T字路突き当たりの壁を調べたが、隠し扉などは見つけられなかった。通路を調べつつ右側に進んで行くと、ちょうど下の階と同じ間取りで、「ダーネル=リッシュオット」とプレートのある部屋にやってきた。
 部屋の中ではダーネルの亡霊が待っていた。
「我が望みを明かしてもらえたかな」
 亡霊は丁寧に尋ねてきた。
「まだだ」
と、セリフィアが答えた。
「あんた、本当に覚えていないのか?」
 ダーネルの亡霊は哀しそうに首を横に振って、「本当にわからないのだ」と淋しく呟いた。
 背後からドヤドヤと人の来る音がして、振り向くとカインたちが到着したところだった。
「あれ、どうしたの? どこから登ってきたの?」
「スロープを登ってきた。途中で分岐点があったぞ」
「あっしとしたことが、あんな簡単な仕掛けに気づかないなんて……」
 一同が言葉を交わす背後で、息を呑む音がした。
「その剣は…!!」
 Gが腰に差した剣を見るなり、ダーネルの亡霊は叫んだ。<続く>

間奏「奇蹟の準備」より抜粋

 4月27日、昼。
 Gとセリフィアは近くの森へピクニックに出かけた。
 歩きながら、セリフィアは妙に落ち着かない様子だった。Gの顔を見て突然赤くなったり、始終そわそわとしていた。GはGで、
(ラクリマさんがいなくていいのかな。セリフィアさん、物足りなくないかな)
と、何度も確かめるように彼の顔色を伺った。
 あたりは春たけなわだった。地面の黒を割るように赤い小花が六枚の花弁を大らかに開き、日当たりのいい場所には白爪草が緑と白の絨緞を広げている。柔らかな緑の草はところ構わずに伸び、かしこにたんぽぽの黄色い頭や綿毛が見えた。
 なんと花々にあふれたぜいたくな土地だろう。足下の草を踏むのさえ憚られる。
(セリフィアさんも嬉しいかな。花が好きだって言ってたから)
 そう思ってセリフィアを見た。ぱっと目が合った瞬間、また彼が顔を赤くした。<続く>


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