●資料 ◆7巻目次 ◆人物紹介 ◆迷宮図 |
『小さな世界の物語 7巻』について、もうちょっとご紹介しましょう。ここではほんの少しだけ、部分的な立ち読みができます。左のメニューで見たいところを選んでください。
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◆第十四話「鏡の迷宮〜前編」より抜粋 「済みません、治療の呪文は残ってますか?」 僧侶だと思い当たった瞬間、その台詞がセリフィアの口から突いて出ていた。 「そうね」 アナスターシャはちょっと考えるようにして答えた。 「私の名前を呼んでくれたら」 セリフィアはあせった。汗を流し、記憶を総動員して、必死で思い出した。 「アナスターサ……アナスターシャさんだと思いますが」 舌を噛みながら、彼はようよう答えた。 アナスターシャは押し黙ったあと治癒呪文を唱えた。それから小声で、 「あなたって、自分の興味のないことにはとことん冷たいのね」 「気をつけます」 気があるんだかないんだかわからない口調でセリフィアは答えた。 「別に気をつけろって言ってるわけじゃないわ。でも私、あなたのことは前から知ってたわ」 「剣のせいですか」 「剣のせいじゃないわ」 「そうですか。ありがとうございます」 アナスターシャはまたちょっと黙った。ややあって、 「ところで私の名前は?」 「アナスターシャしゃん……」 セリフィアはまたも舌を噛んだ。 「私の名前、そんなに呼びにくいかしら?」 セリフィアはばつが悪そうに言った。 「何か別の呼び方じゃいけませんか」 「何でもいいわよ。あなたが決めて」 「今、どう呼ばれているんですか?」 「私はあなたに決めてほしいの」 「………」 セリフィアは悩んだ。どう呼べば呼びやすいんだろう。いや、それより俺が舌を噛まずに呼べればいいんじゃないのか? そう思って、彼は「アナスターシャアナスターシャアナスターシャ……」と密かに連呼してみた。途中で何度もつっかえた。しかし、だからといっていい呼び名も思い浮かばないようだった。 「……アナスターシャさんでいいです」<続く> ◆第十五話「鏡の迷宮〜後編」より抜粋 ◆第十六話「審判の時」より抜粋 第十六話「審判の時」より抜粋 |
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