「のう、ダーガイムよ。なかなか面白い奴らがやって来たぞ。まだまだ見捨てたモンでは無いって、人間ってヤツは。
確かに馬鹿みたいな事もいっぱいするけれども、それでも女神エオリスが選んだのは人間じゃて。
まあ、お前さんの立場も判る。あの時もそうせざるを得なかったのも、そして今もそうせざるを得ないことも。
今の状態では、確かにそれが一番じゃろう。無駄な争いをせずにすむしな。
しかし、もしこの件が済めば、もしかして光明が見えてくるのではないかな。なにより、奴らの中には、あいつがいる。
それが何よりの証拠じゃて。ソナタは気がすすまんじゃろうが、今のままで良いわけがあるまい。
ちょっと考えてみておいてくれんかね。ソナタの力は必要じゃて」
狭い部屋の中、ランプが一つだけ点いていた。
暖炉の火は既に消え、急激に冷え込んでいく部屋の中、男は一人で話していた。
しかし、彼の声を聞く者の姿はどこにもなかった。外は、雪がしんしんと降り続けている…。
(『序奏 エピローグ』より ◆ 2002年4月初出)