昼間だろうが、部屋の窓を閉め切った暗い部屋。
どこかの宿屋の2階だろうか、簡素なベットが部屋の大部分を占めている。
部屋の扉がノックされ、一人の男がやや沈んだ様子で入ってくる。
「報告します。布教活動中のディライト兄弟が、死亡しました。
兄は斬殺、弟の方は、B死でした。布教道具は、配布後のようです」
部屋の中にいた人物は、取り立て感情の起伏もなく、
「そう」
と、短く答えた。
その返答を聞いているのか聞いていないのか判らずに、入ってきた男の方はなおも報告を続けた。
「早速、目標地点に偵察を入れます。フィルシム市内のコアが破壊された以上、あの地点のコアが順調に育ってもらわないと計画に支障をきたします」
「まかせた」
と、またもや短く答える。その言葉からは、全くやる気が感じられない。
「では失礼いたします」
報告者は、判っていたものの、気のない返事にややがっかりしながら部屋を出ていった。
…まったく、なんであんな人を担がなきゃならないんだ…。
(『第二話 プロローグ』より ◆ 2002年5月初出)