2005年6月の定例講座
南高地に開花したティワナク社会
講師:加藤泰建埼玉大学教授
2005年6月18日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて
ボリビアのティワナク遺跡は、ティティカカ湖南東にある先スペイン期の遺跡で、2000年には世界遺産に登録されました。加藤先生は、世界遺産登録に際してUNESCOが付した遺跡修復方法についての疑問に関連して2002年に派遣された国際調査団に大貫良夫先生とともに参加されるなど、この遺跡の意義などに関わってこられました。
かつては祭祀遺跡でありふだんは人が住まないところと考えられていたティワナクですが、近年の研究により常時巨大な人口を抱える都市センターだったことが明らかになってきています。
ティワナクは先スペイン期の500〜1100年頃、南部アンデスに栄え、最盛期にはペルーやチリの一部を含む広い範囲に文化的影響を及ぼしました。加藤先生は16世紀のスペイン人記録者に始まるティワナク研究の歴史やティワナク遺跡の概観、またティワナク研究の意味などについて話されました。
標高3,800mを超え、現在でも農業を行うことが困難な厳しい環境のこの地に、なぜ巨大な国家が成立し得たかという問題は、学術的にも意味のあるテーマだそうです。人類の文明史上でも特異な環境のもとに成立しその変化に適応した社会的、文化的な変遷をたどってきたティワナク社会の研究は、現代社会が抱える環境問題の解決にも何らかの示唆を与えてくれるかもしれません。講義の最後は「世界遺産ティワナクは現代人の歴史ロマンをかき立てるだけでなく、われわれの未来に資する遺産である」という言葉で締めくくられました。
7月〜9月は、先生方が現地での発掘に従事されるためお休みします。
次回10月15日(土)は井口欣也埼玉大学助教授による
ペルー北海岸のシカン文化
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