2006年5月の定例講座
ネペーニャ谷の形成期とチャビン問題
−セロ・ブランコとワカ・パルティーダ遺跡の発掘から−
講師:芝田 幸一郎 日本学術振興会特別研究員
2006年5月20日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて
「チャビン問題」とは、形成期におけるホライズン現象を、チャビン・デ・ワンタルからの/への影響との関係で説明することにともなう諸問題で、古くて新しい大テーマです。未だ解決はしていません。今回の講義は、形成期編年上の問題というチャビン問題のシンプルな一側面に、新データから光をあてるものでした。チャビン問題に関わるさまざまな仮説が、形成期の半ばに海岸地域で起こった変化を取り上げているのに、その海岸地域の編年が確立されていないそうです。
芝田先生らの調査団によるセロ・ブランコ遺跡とワカ・パルティーダ遺跡の発掘によって、北部中央海岸地域の形成期編年が固まりつつあります。前者が形成期前期の1200BC頃に、後者が形成期中期に作られ始めたことが判りました。またバーガーによってチャビン・ホライズンの証拠とされたセロ・ブランコのレリーフも、それと同時期のワカ・パルティーダのレリーフも、バーガーの推測よりずっと古いと判明しました。彼が考えているチャビン影響の拡大期とは無関係ということです。この結果だけみれば、最近ジョン・リックらが発表したチャビン・デ・ワンタルの編年解釈と相性が良いのですが、リックらの解釈には危うい点があり、これで論争解決とはならないようです。むしろ、これまでのどの仮説にも当てはまらないネペーニャ谷のデータの分析を進めて、新しい仮説を組み立てることが今後の研究課題とのことです。
両遺跡の写真や動画、今年1月に日本で発表された巨大なジャガーのレリーフの写真など、とても貴重な映像をたくさん見せて頂きました。2007年に予定されている次回の発掘によって、さらなる発見が期待されます。
次回6月17日(土)は井口欣也 埼玉大学助教授による
ペルー北部サーニャ谷の形成期
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