2006年11月の定例講座
遺伝学から見た古代アンデス人
講師:篠田 謙一先生(国立科学博物館人類研究部)
2006年11月18日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて
ミトコンドリアDNAの分析で、アメリカ大陸への移住グループの大部分は氷河期のベーリング陸橋を渡ったとされる17世紀末以来の認識が改めて確認された。
南北アメリカ原住民と中国北部、シベリア南東部、モンゴルなどの集団で共通のDNAが見つかっている。
しかしもう一方で、ベーリング陸橋だけではない複数移動路の可能性がでてきたことや、移動時期が従来の定説よりも早まる結果が出てきていることなどから、アメリカ先住民の起源については混乱期に入っているとも言える。
10年ほど前までは、考古学や言語学の研究から、移動時期は1万3500年ほど前というのが定説だった。その後、チリのモンテ・ベルデ遺跡をはじめこの数値をさかのぼる遺跡があいついで発見されていることや、ミトコンドリアDNAの分析結果から、移動時期は2万年〜4万年前という数値が出てきている。
今後どう進展するのか、考古学にどう反映されていくのか、楽しみだ。
次に、古代アンデス先住民のDNA分析例が示された。*ウルバンバ川流域住民のDNA分析、*北海岸のモチェやシカン遺跡から出土した人骨のDNA分析例などが紹介された。これらの例から遺跡内部の血縁関係の推定や集団内部の血縁関係を説明された。
次回2007年12月16日(土)は関雄二先生(国立民族学博物館教授)による
アンデスの神殿を掘る ― ペルー北高地パコパンパ遺跡の発掘速報
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