古代のアンデス文明およびマヤ文明を研究する同好会

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2007年2月の講師
大越翼 上智大学教授

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2007年2月の定例講座

後古典期マヤ北部低地における王権をめぐって
講師:大越翼 上智大学教授

2007年2月17日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて


 先生には、講義を始めるに当り何故この様な研究をする様になったかを説明して頂きました。事の発端は約35年前に見たNHKスペシャル「未来への遺産」という番組でトゥルム遺跡(マヤ)を知り、研究への道へと進まれたそうです。講義を聴講していた我々も多少なりとも同じ様な感覚があり、実際に研究者としての道に進んだか、個人的に興味を持ち続け現在当研究会に所属し勉強しているかの違いはありますがマヤ文明をはじめとする新大陸における歴史に魅せられた先生は、同じ大学で学んだ私としては強い意志に基づき研究の道に突き進んだ先生を羨ましくも感じ、同時に憧れる存在にもなりました。

 本題に入りますと、先生の研究の方法論でありますエスノヒストリー(Ethnohistory)について教えて頂きました。聞きなれない言葉だったのですが古文書を元に当時の歴史的背景を的確に掴みとり、先スペイン期や植民地時代のマヤ社会を鑑みるものですが、全てスペイン語か古典マヤ語にて記載された文献を読み解くのはさぞ時間もかかる作業であろうと思います。印象的だったのはカルキニ村のお話の中の「セイバの樹」のお話でした。古文書に記載された内容をもとにその樹を探し回り、実際に自分の目で確かめられたこと、これは研究者としてもうれしい限りだったと思います。(まだ生きていた樹にも驚きましたが。)

 肝心の王権の話ですが、土地に対するマヤ人の考え方が全く我々と違い、どちらかと言うと対地主義を基本として支配するのではなく、点と点を結んで行く支配構造とでも呼ぶのでしょうか、そもそも、土地を財産の基本とは考えずに、支配、被支配者との間に結ばれる重層的な関係に王国の基盤があったようです。支配する側の王が居て、支配される側の王もいる。後者からみれば、むろん前者にたいして貢納をするのは当然としても、これとは逆の経路をたどって行われる威信財の再分配がいかに豊かに行われているかということは、その傘下に入るか否かを決定する大きな要素でした。かといって、すべての小国がどこかの王国に属していたというわけでもなく、独自にどこにも属さず存在した小王国もあったことも事実です。また経済力が無くなり、威信財を再分配できないと従属しなくなるなど、現代社会よりシビアな一面をみせています。先生の言葉を借りますと、マヤの王は「強大な権力を振るう王」では決してなく、原則を無視して法外な貢納を要求したりした時には平民がその王を権力の座から引きずりおろしたこともあったそうです。王とは英雄であり、民から人気がなくてはならない様です。私にとっては先生のお話は今回で2回目でした。いつ聞いても楽しいお話ですので次回も楽しみにしたいと思います。

次回2007年3月17日(土)は青山和夫先生(茨城大学教授)による
古典期マヤ文明の衰退


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