2007年10月の定例講座
インカ帝国の首都クスコとビルカバンバ
講師:坂井 正人 山形大学准教授
2007年10月20日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて
ビルカバンバは、インカ帝国最後の皇帝であるトゥパク・アマルらがスペイン軍に抵抗するために立てこもった、「インカ帝国最後の都」とされています。長年その場所は謎のままであり、マチュピチュを発見したハイラム・ビンガムは、実はマチュピチュ遺跡こそビルカバンバである、と主張していたことがあります。
そんな中、1977年、エドムンド・ギエンという研究者が、それまで「エスピリトゥ・パンパ」という名で知られていた遺跡こそが、真のビルカバンバであることを証明しました。治安などの問題から、なかなか本格的な調査が行われていなかったのですが、2003年、クスコの文化庁が調査を始め、続いて2005年から2006年にかけて、山形大学の坂井正人准教授らが調査を行い、遺跡全体の地図を作成すると同時に、「エスピリトゥ・パンパこそ、ビルカバンバである」という説を考古学的に検証することになったのです。
今回の調査のユニークなところは、クスコとエスピリトゥ・パンパを比較することで、エスピリトゥ・パンパに「インカ帝国の首都ならではの特徴」、すなわちビルカバンバである証拠を見出そうとしたことです。
方位や聖なる石、聖山の位置など、坂井先生ならではの興味深い分析を示してくださり、インカの世界観に改めて触れた思いがしました。アンデス山中の数々のインカ遺跡を地図上で再確認できたことも、大きな収穫でした。
ちなみにビルカバンバには、「インカの皇帝が隠した財宝が眠っているのでは」という言い伝えがあったのですが、世間の期待とは裏腹に、遺跡には金銀や立派な建造物が残された形跡はなく、かのハイラム・ビンガムもこのエスピリトゥ・パンパを訪れたときに、まさかこの場所がビルカバンバだとは思わなかったとのこと。結局財宝は存在しないのか、それともこれから第二、第三のビルカバンバが見つかるのか、大変興味深いところではあります。
次回2007年11月17日(土)は山本 紀夫 国立民族学博物館名誉教授による
ヒマラヤから見たアンデス
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