2007年11月の定例講座
アンデスからみたヒマラヤ
講師:山本 紀夫 国立民族学博物館名誉教授
2007年11月17日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて
高地で大きな定住人口を擁する地域、アンデス高地、ヒマラヤ・チベット高原、エチオピア高地が世界の3大高地。こうした地域の存在から、先生は世界の4大文明などの大河文明とは異なる「高地文明」を提起されました。
3地域に共通して高地での暮らしを可能にしているのは、緯度が低く、熱帯ないし亜熱帯に位置している事。この為、高地でも1年を通して気候が比較的温暖で、生活ができるそうです。例えば、ボリビアのラパスでは1年通して平均気温が10℃。また、3地域に共通する事は、それぞれに独自の作物を有し家畜を飼っている事。家畜の糞を作物の肥料や燃料として利用する事も共通しています。
南北約8000qもあるアンデス山脈では緯度によってかなり環境が違い、実際に大きな人口を擁しているのは中央アンデスです。アンデスについては先生が30年前に滞在されたマルカパタ村について、当時のエピソードを交えお話しいただきました。ケチュア族では高地の事を虫や蛇のいない「健康地」と呼び、これに関しては、確かに病原菌の繁殖を抑制する利点があるそうです。4000m以上でリャマ・アルパカの放牧。3500m以上はジャガイモなどの芋類、3500m以下はトウモロコシを栽培しています。
チベットのラサ近郊にあるヤルツァンポー川流域は高原が広がる穀倉地帯。大麦・小麦・蕎麦の在来品種があり、家畜はヤク。チベットには冬があり降雪があるため、放牧地が変わり、乳を利用する事がアンデスと違います。驚いた事に、現在はアンデスさながらにジャガイモが栽培されているそうです。エチオピア高地でも、以前は主に大麦を栽培していたはずが、現在ではそれがトウモロコシにとって変わられているそうです。他の作物では風草の仲間テフ、偽バナナがあります。遺跡があり、文字も発明されています。
他に、中米も人口が多く標高2000mにティオティワカンがあり「高地文明」と呼べるのではないかとの事でした。
次回2007年12月15日(土)は関 雄二 国立民族学博物館教授による
考古学におけるインカ像の形成
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