2008年3月の定例講座
神秘と謎のマヤ文明観の起源:実証的なマヤ文明観と「真の世界史」に向けて
講師:青山和夫 茨城大学人文学部教授
2008年3月15日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて
マヤ文明といえば、「神秘と謎の文明」というキャッチフレーズが使われることがよくあります。普段あまり深く気にとめていませんでしたが、よく考えると、世界にはさまざまな古代文明があり、その歴史や社会構造などが研究されているのに、マヤ文明だけ何か特別な謎だらけの文明であるということもないはずですよね。今回の青山先生のお話は、考古学者たちの地道な調査のおかげで、「神秘」「謎」という部分が次第に薄れ、マヤ文明が世界史の中の一文明として位置づけられるようになってきたというものです。
確かに、マヤ文明は「金属器が使われなかった」「車輪が発明されなかった」という特殊な部分があるのですが、これは別に「遅れていた」というわけではなく、逆に「他にはない、洗練された高度な石器文明が栄えていた」と考えることもできるわけです。
青山先生は、「古典期マヤ人の日常生活と政治経済組織の研究」によって、2007年12月に日本学術振興会賞を、2008年2月に日本学士院学術奨励賞を受賞。特に日本学士院のほうは、5名中4名が自然科学系の研究者であり、青山先生は唯一の人文・社会科学系の研究者だったそうです。マヤ文明の研究といえば、一般にアメリカの研究者を中心に進んでいるという印象がありますが、ここのところ、青山先生のように日本人の研究者の方々が第一線で活躍されているようで、なんともうれしい限りですね。
講座では、コパン、ラ・エントラーダ、エル・プエンテ、アグアテカ、セイバルなど、過去の調査のお話をいろいろとうかがいました。日本人のチームが中米で調査をするようになったのは、まだ20年ほど前とのことですが、当時と今では、隔世の感がありますね。
次回2008年4月19日(土)は関 雄二 国立民族学博物館教授による
アンデスのミイラ
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