古代のアンデス文明およびマヤ文明を研究する同好会

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2008年6月の定例講座

クスコのインカ遺跡を掘る−ウルピカンチャ遺跡発掘調査
講師:徳江佐和子 明治学院大学非常勤講師

2008年6月14日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて


 プレインカのアンデス文明に比べて、インカについてはスペイン人や先住民自身が書いた記録文書が、多数存在します。今までインカ研究というと、それらを使ってクスコ中心で行われてきました。それがなぜ今になってインカ遺跡を掘るのでしょうか?それは、ほとんどの記録文書には、当時のスペインの価値観のフィルターがかかっていて、それらから作られたインカ像もそれに沿って偏っているかもしれず、体系的な考古学資料に基づいて検証されているわけではないからです。徳江先生はまず、インカ国家について考古学的視点から実際にわかっていることをはっきりさせるために、熊井茂行明治学院大学教授と一緒に、2003年からインカ遺跡の広域調査を始められました。

 2003年から2004年の計6ヶ月間に渡る遺跡の広域調査では、インカ全土の地方支配の拠点と思われる「地方行政センター」らしい遺跡や、クスコ地方の多数の遺跡を訪れた結果、インカ遺跡の特徴は多様性であるということがわかりました。理由ははっきりしませんが、地域差や100年間にわたる時期差、地元勢力との関係の違いなどが考えられます。ただし、各建築の用途や機能がはっきりしないものが多く、各遺跡の用途や機能も確定できていません。また、近年、発掘調査の不足が認識され、各地方で発掘が進められるようになりましたが、クスコ周辺については従来の文献による研究がほとんどで、地方の研究者との学術的交流も少ないので、ベンチマークとなるべき首都クスコ周辺での発掘調査が絶対に必要であると考えられ、ウルピカンチャ遺跡を発掘することにされました。

 ウルピカンチャはクスコの南東30kmのワカルパイ湖畔にあります。周辺には600年ごろからインカ征服までの多数の遺跡があり、2つの半円形広場、テラスとその上の構造物、巨石を組み込んだ建築物からなり、周囲にはアンデネスが残る、保存状態のよい遺跡です。2005年と2006年に行われた発掘と、2007年の土器分析の結果から、建設はインカの一時期、それも植民地期直前である可能性が高く、水路が遺跡全体を通り、しかも以前の水路の再利用ではなく新しく引いてきていることなどから、計画的な大工事で、インカにとってかなり重要な場所であったことが推測されます。儀礼的な機能を持つ建物が大半で、住居址や倉庫が発見されなかったことから考えて、周辺の他のインカ遺跡とセットになって機能していた可能性が高いようです。その他のこの遺跡に独特な特徴もあり、地域の他の遺跡との比較検討が、今後の重要課題となっています。

次回2008年10月18日(土)は井口 欣也 埼玉大准教授による
クントゥル・ワシ神殿の3Dモデル分析


*受講には申し込みが必要です。詳しくは入会案内をご覧ください。