古代のアンデス文明およびマヤ文明を研究する同好会

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2008年10月の定例講座

アンデス形成期の神殿変容プロセス
〜クントゥル・ワシ神殿の3Dモデル分析から〜

講師:井口 欣也 埼玉大准教授

2008年10月18日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて


クントゥル・ワシ遺跡は、1946年にフーリオ・C・テーヨの弟子による視察・調査も行われていました。1982年にドイツ人考古学者による地形測量があり、東京大学アンデス調査団は、1988年〜2002年にかけて、12シーズンもの発掘調査を行いました。遺跡主要部分の約半分を発掘する大規模な発掘で、更に2000年から2003年には遺跡の修復保存もされました。

平面図では、ただ想像するだけなのですが、3Dモデルは、それぞれの時期の建築を一望のもとに、色んな角度から、細部に渡るまで見ることができます。 復元するためには、まず詳細な図面が必要です。発掘すると色んな時期の石列が一度に出てきます。これを平面図にとり、さらに時期ごとに分けて図面を作成していきます。クントゥル・ワシ遺跡は建築の変容で分けていくと、9つのサブフェイズになり、3Dに復元できたのは、この内の4つ、クントゥル・ワシ期の2つとコパ期の2つです。

イドロ期はクントゥル・ワシ最初の神殿建築が誕生した時期で、基壇と広場の組み合わせで出来ていました。クントゥル・ワシ期ではイドロの建築をすべて埋めて新たな神殿建設と「神殿建築の基本原理」が構築されました。基本原理は、大基壇とそこに上がる主階段。大基壇上の中心部にある広場とその四方を囲む基壇。神殿カナルです。コパ期では、まずこの基本原理が維持され南西部に新たな神殿が拡張、2つの領域に分かれますが、終末には広場や階段、水路も埋められ、基本原理の重要性が失われ放棄されていきました。ソテーラ期にはついに正面の主階段も埋められ、神殿機能は放棄、大きな建築はなくなって行きました。

クントゥル・ワシ遺跡は土器、建築、絶対年代の揃った遺跡としてこれからの研究に参照される遺跡になったことに重要な意義があります。また、広域型神殿が確立し、地域型神殿に変化していったという、神殿を中心とする具体的な社会プロセス解明のための事例にもなり、中央アンデスの広範な地域における関係性の解明のために鍵となる遺跡でもあります。


次回2008年11月15日(土)は大平 秀一 東海大准教授による
インカの生贄:イメージと実体


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