古代のアンデス文明およびマヤ文明を研究する同好会

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2008年11月の定例講座

インカの生贄:イメージと実体
講師:大平 秀一 東海大学文学部アメリカ文明学科准教授

2008年11月15日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて


 「発見」された当時のアメリカ大陸は、「新世界」「第4の世界」として新奇・異様・非等質性・恐怖のイメージが持たれた。

 プレ・インカの図像表現は生贄を含んだ具体、具象に富むが、インカの図像表現は様式化され、生贄の識別困難である。

 インカの生贄はペルー以南のアンデス地域の雪を抱いた高峰に限定し、北方エクアドルには存在せず、国家レベルの儀礼とされてきた。原因は生贄の出土例は僅少で遺物は残存しにくく、人骨からは自然死か生き埋めかの判断が困難なこと、遺跡を故意に隠したので検出が困難なことである。

 クロニカは、インカの生贄とは「カパクチャ(カパコチャ)」というアザやシミのない潔白な若年者の生贄のことで、彼らには多くの捧げ物や聖像が供えられ、国家レベルの儀礼がなされたというが、彼の生贄に関する記述は極めて断片的だった。

 具体例としてポルボラ・バハ遺跡やオクロス文書がある。これにより、実際は生贄を埋葬した墓は意図的に隠され、アンデス南部だけでなくエクアドル領域でも実践され、雪山のみでなくさほど際立った特徴のない丘にすら生贄を捧げており、インカのあらゆる領域で若年者の生贄を伴う儀礼が捧げられていたことが伺える。

 先住民の生贄をめぐる世界観は、例え世界観にもとづいた行為とはいえ、若年者、子供の生贄を捧げることは悲しさに包まれた、秘められた行為であった。

 以上がインカと生贄の関係をめぐる否定的イメージの創出である。


次回2008年12月20日(土)は関 雄二 国立民族学博物館教授による
パコパンパ遺跡発掘最新情報


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