2009年1月の定例講座
マヤ地域における先住民文化遺産/資源をめぐる諸問題
講師:寺崎秀一郎 早稲田大学文学学術院 准教授
2009年1月17日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて
先住民をめぐる諸問題は必ずしもラテンアメリカに限らない。今回は他の発展途上国や先進国内に住む先住民及び国際機関の動きなどもとりあげ、マヤ地域と比較しながらの講義であった。
「先住民とは誰か」は植民地時代に後からやってきた人達に追いやられた人々。先住民と少数民族は重なる場合もあるが同義ではない。
持続可能な開発のひとつが「観光」。エコツーリズムがそのモデルケースで脚光を浴びているが、考古学ツーリズムはその亜種と言える。ホンジュラスのコパン遺跡は、年間16万人を超える観光客を集めている。もと小さな山村であった場所に現在は30軒を超えるホテルが立ち並び、すでに下水などのインフラが限界を超えている。グアテマラのティカル遺跡公園内には、立派なプールが備わったホテルまであるが、この遺跡には元々水源はなく地下130メートルから水をくみ上げ宿泊施設他に供給している。熱帯雨林には意外と水は無い。
マヤ文化圏の熱帯雨林地域は、かつては、無価値と看做されていた。そこが開発・発展の為に農地・放牧地拡大で森林伐採が進み、長らく人目に触れる事がなかった遺跡の破壊が進んでいる。
マヤ地域にはマヤではない民族もいくつもあり彼ら自身、自分達はメスティソだ、マヤではないと言っているが、一般的には先スペイン期のものはすべて「マヤ」と言っている。マヤでなくても古いものは「マヤ」といっておく。古きもの・エキセントリックなもの=マヤ、あらゆる所にマヤがあふれているのが現状である。
次回2009年2月21日(土)は大越 翼 上智大学教授による
マヤ文化における水の利用を考える ― 私のフィールドノートから
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