古代のアンデス文明およびマヤ文明を研究する同好会

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2010年1月の定例講座

「アステカ帝国」の実像を考える
講師:井上幸孝 専修大学准教授

2010年1月23日(土)
東京外国語大学本郷サテライトにて


一般に「アステカ帝国」はメソアメリカを代表する強大帝国と言うイメージを強く持たれています。この講座では、先生のご専門であるナワトル語文献や、先住民の絵文書なども参照し、後古典期のメキシコ中央部の歴史、スペインによる征服も含め「アステカ帝国」の実像の再考を試みました。
メシーカ人は神話的発祥の地からメキシコ中央部に進出してテノチティトランを築き、その地にもともとあった三都市同盟の一つを形成していたアスカポツァルコ(テパネカ人)に従属し、やがて勢力を拡大してテツココと力を合わせ、アスカポツァルコを滅ぼしました。「アステカ帝国」の実態は、テノチティトランがテツココ、トラコパンと結んだ三都市同盟の一形態であり、一般に考えられているような皇帝を戴く「帝国」のイメージとは異なるものでした。
スペインがアステカを滅ぼしたとき、これに荷担したトラスカラは「裏切り者」とされます。しかし、後古典期の政治的経緯を踏まえれば、かつてメシーカ人がしたように、新たな三都市同盟を作ろうとしただけだったのかもしれません。同じように前後の歴史的文脈を慎重に検討することで、征服者コルテスの愛人兼通訳となった先住民マリンチェの「売国奴」という評価も見直しが必要でしょう。
20世紀後半に入って、ナワトル語の先住民史料が読まれるようになりましたが、西洋人の書いた史料と付き合わせて、これらの歴史の再検討や再評価を行うことが必要です。


次回2010年2月20日(土)は井関睦美先生(慶応大学文学部助教)による
アステカの神話と儀礼


*受講には申し込みが必要です。詳しくは入会案内をご覧ください。