2010年3月の定例講座
環太平洋におけるマヤ文明の環境文明史 講師:青山和夫 茨城大学人文学部教授
2010年3月20日(土) 東京外国語大学本郷サテライトにて
1)環太平洋の環境文明史について この研究は文科省の科学研究費補助金約5億円強によって、平成21年度から25年度に実施されるもので、青山先生はこの研究プロジェクトの領域代表者になっておられます。従来の文明史は西洋中心的、専門領域的、限定地域的な面が強かったのですが、この研究は考古学者や歴史学者だけではなく、地理学者、古環境学者、植物学者、動物学者、心理学者など色々な分野の専門家の英知を集め、環太平洋の非西洋型諸文明(メソアメリカ、アンデス、太平洋島嶼、東南アジアなど)の通時的な比較研究を行うもので、このような文理融合的な比較研究は世界でも初めてのものです。
2)セイバル遺跡(グアテマラ)の通時的研究 2005年からの調査では、中央広場の東にある王宮と、南にあるEグループの二つの神殿とさらに南にある大神殿ピラミッドの基壇の発掘が行われましたが、約2000年にわたって建造物が増改築されたことが分かりました。2009年度には、大神殿ピラミッドの基壇の層位的発掘からXe(シェ)期の土製建造物が発見され、セイバルの初期(前1000年〜前400年)の建設活動従来考えられていたよりも盛んであり、従来の古典期マヤ文明の起源は先古典期後期に遡るという説は、さらに先古典期中期まで遡ることになりそうです。この土製建造物はティカルより古い可能性があります。さらに土製建造物の上の層からオルメカ美術様式の前700年頃の磨製石斧の供物が出土し、セイバルの支配者がオルメカ文明などとの遠距離交換に参加していたことも分かりました。
次回2010年4月17日(土)は鶴見英成先生(東京大学総合研究博物館 特任研究員)による
神殿を離れて山野へ:アンデス文明の岩絵研究 |