2010年12月の定例講座
パコパンパ遺跡2010年調査報告 ―パコパンパ貴婦人の墓の周囲について― 講師:関 雄二先生(国立民族学博物館教授)
2010年12月18日(土) 東京外国語大学本郷サテライトにて
今年の11月15日、パコパンパ遺跡はペルーの国有の史跡に指定されました。去年は貴婦人の墓に集中していたので今年は墓の周りを探ることにしました。TA期とTB期では中心軸がずれていました。TB期の中心軸はU期にも維持され、建築軸も踏襲しています。TB期に円形構造物、炉が造られ、火の儀礼が行われていました。パコパンパの貴婦人について、身長162センチ、年齢20から30才くらい、大きな病気はなく自然死、虫歯がある事などが新たに解りました。
T期の床面を出して、それを下げる作業をしたところ、古い方から二番目の床面を放棄したとき切った穴を墓に利用し、U期に貴婦人の墓を造るにあたって、その穴を再度切っていました。U期で初めて固定的なリーダーが出現したという去年までの仮説(副葬品、頭蓋変形、生まれながらの社会的なある種の役割)を改め、T期の末に同じような現象があったと解釈していいかもしれません。これが墓だとして、それを排除したという事は、T期からU期への社会変化に応じた宗教的権威の交代ではないかと考えられます。
円形構造物については、盗掘抗を清掃し、石器の奉納場所をみつけました。また金製品の蛍光X線分析を行い、金の組成を調べました。パコパンパではU期に螢孔雀石、藍銅鉱、銅製品がたくさん出土します。銅製品を分析する事により、パコパンパと他の地方との交流が解明されるのではないでしょうか。
次回2011年1月22日(土)
は嘉幡 茂先生(愛知県立大学客員共同研究員)による
古代メソアメリカ社会における周辺地域のダイナミズム:トルーカ盆地とテオティワカン
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