2011年2月の定例講座
マヤ語で書く―現代グアテマラ・ケクチ語の場合― 講師:渋下 賢先生(東京大学大学院 人文社会系研究科 博士課程)
2011年2月19日(土) 東京外国語大学本郷サテライトにて
先生のご専門は言語学で、その中でも言語習得・教育の分野、「読み書きが人間にどのような影響を及ぼすか」をテーマにされています。2006年からグアテマラのアルタベラパス県コベバン市周辺に行かれ、マヤ諸語の中で、特にこの地方で話されているケクチ語の現代表記(アルファベット)による読み書きの現状を研究されています。
現代のグアテマラの地方部では、公用語の他に日常会話では、旧来のマヤ諸語(20種以上ある)が使用されているバイリンガル状態になっていて、アルタベラパス県では人口92万人のうち、約78%がケクチ語を使用しています。スペイン人到来以来、中央政府は公用語にスペイン語を使用してきましたが、1987年からはマヤ言語アカデミー(ALMG)によって、マヤ諸語の復活運動が行われ、アルファベットによるマヤ諸語の表記(正書法)が公式化され、特にケクチ語の特徴である口蓋垂破裂音(喉チンコを震わせる。日本語のガの発音に近い)、声門閉鎖音(喉を絞める音)の表記法も整備されてきました。
ケクチ語文書使用の実例として、中学生が年長者から民話の聞き取りを行い文書化した文章と、熟練者がこれを校正した文章の比較がありましたが、中学生が発音に依存した文書を書くのに対し、熟練者は文法に依存した文書を書き、正書法がまだまだ整備されなければならないとの印象を持ちました。
次回2011年3月19日(土)
は杓谷茂樹先生(中部大学教授)による
太陽と月になった双子の神について・マヤ神話「ポポル・ウーフ」から
※3月19日の定例講座は延期となっています。 |