アンデス文明研究会特別公開講座リポート
9月のアンデス文明研究会・特別公開講座が下記の要領で開催されました。
ペルー装いの万華鏡:<衣>からみたペルーの歴史と文化 講師:佐々木直美(法政大学国際文化学部准教授)
2011年9月17日(土) 東京外国語大学本郷サテライトにて
インカの時代、王は髪を短く刈り、多彩色の四重の頭飾り、マスカパイチャと呼ばれる前髪のような飾りをつけていました。先スペイン期の服装は、男性はウンク(チュニック)、ヤコリャ(マント)、ウスタ(サンダル)、女性はパンパコナ(頭巾)、アナク(長いチュニック)、チュンピ(帯)、リクリャ(肩掛け)、トゥプ(留めピン)でした。これらを基本に、地方(村、部族)ごとに柄や徴があり、特に頭飾りは特徴的なものを持っていました。
植民地期、18世紀には、スペインの習慣、衣服が強要されました。スペインを経由した、アラブの影響も受けました(ポプリなど)。男性は、帽子に膝丈のズボン、時にはポンチョ、女性はブラウスと黒のスカート、チュンピ。ともに正装ではマントを羽織り、女性は靴、ペチコートが加わります。
独立後、19世紀には、イギリス、アメリカから布、紳士服、織物が、フランスから婦人服が輸入されました。植民地期後半から独立期初期、リマでは、アラブ風のサヤ(ワンピース)、タパーダ(片目だけを出す黒いマント)が流行しました。
現在の服装は、基本は男性は帽子、ジャケット、時にはベスト、ズボン、女性は帽子、リクリャ、ブラウス、スカート、ペチコートです。アンカッシュ県(Vicos)の男性は白いソフト帽に黒いリボンと多色使いの紐、女性は髪を糸を編み込んだ細い三つ編みにし、リボンや紐で飾ったカラフルな帽子。リマ県(Tupe)では女性は髪を布でくるみ、ピアス、黒いアナク、赤のチュンピ、長めのマント、トゥプ。服もそうですが特に帽子には様々なバリエーションがあります。
現代の服装にも、インカ期の伝統が流れており、さらに植民地時代からの影響も加わっています。その中でも重要なのは、村、部族ごとに異なっていた頭飾りの伝統で、帽子やベール、飾り紐などと形を変え現代に引き継がれています。
次回2011年10月15日(土)
は染田秀藤先生(関西外国語大学教授・大阪大学名誉教授)による
先住民クロニスタ、グァマン・ポマのしたたかさ 〜「インカの反乱」をめぐって〜 |