2011年10月の定例講座
先住民記録者ポマのしたたかさ −インカの反乱をめぐって−
講師:染田秀藤先生(関西外国語大学教授、大阪大学名誉教授)
2011年10月15日(土) 東京外国語大学本郷サテライトにて
ポマ(1550?-1615)はアンデス生まれの先住民で、スペイン語を独習し、スペイン人宣教師が行う巡察に通訳として同行、アンデス中央部を跋渉しました。彼はその間に見聞した先住民に対するスペイン人の虐待ぶりをクロニカ(記録文書)『新しい記録と良き統治(Nueva Coronica y Buen Gobierno)』に書き込みました。しかし、作品の存在が明らかになったのは今からわずか1世紀前の1909年に、その手稿がデンマークの王立図書館で発見されたときのことです。
ポマは、スぺイン人の渡来よりはるか前に、アンデスにキリスト教が伝えられたと主張することで、スペインが布教の為の「聖戦」と称して行った征服戦争の正当な権原を否定しています。また、彼はスペイン人が先住民に加えている残虐非道な仕打ちを告発し、「インカの反乱」と言われるインカ人の抵抗運動についても記録しています。
作品には、ポマの意図的な戦術(事実の"歪曲"や無視など)が数々認められ、彼のしたたかさを読み取ることが出来ます。
次回2011年11月19日(土)
は、網野徹哉先生(東京大学准教授)による
インディオの死と遺言書
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